水族館で働く水族館飼育員・解説員になるにはどうすればよいのか、疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。
水族館飼育員・解説員として働くために必須となる資格はありませんが、学歴や専門知識を求められることがあります。
本記事では、水族館で働くためのカリキュラムを用意している専門学校や、水族館飼育員・解説員の給料、仕事内容、必要な資格を紹介します。
水族館での仕事に興味がある人はぜひ参考にしてみてください。
記事の概要
水族館飼育員とは?解説員との違いを説明!
水族館での仕事には、飼育員以外に解説員という仕事もあります。まず水族館飼育員と水族館解説員の違いを把握しておきましょう。
水族館飼育員
水族館飼育員の仕事内容は、水族館にいる生き物の飼育に関する業務全般です。
多くの水族館では、魚類と海獣類で担当が分けられており、水槽ごとに担当が割り振られています。生き物の飼育以外に、お客様を楽しませるためのイベント企画やショーなどの業務も担当します。
具体的な業務をみていきましょう。
■生き物のエサやり
エサやりでは、それぞれの個体に行き渡るように注意しながらあげる必要があります。また、魚たちがエサを食べやすいように、小さく切ったり計量したりする「調餌(ちょうじ)」と呼ばれる作業もおこないます。
■生き物の健康管理
生き物たちの健康を保つために、生き物たちを日々観察し飼育環境を整えます。水槽を巡回して、病気の予兆や異常がないかをチェックします。
病気になった生き物がいれば、別の水槽に移したり、薬を与えて看病したりすることも必要です。健康を維持するために、水槽の水質チェックや掃除も欠かせません。さらに、繁殖を促して種の絶滅を防ぐことも水族館の役割のひとつです。
■生き物の研究
毎日の飼育や観察の結果を記録し、生き物たちの生態を研究します。海の環境問題や自然保護活動にとっても重要な仕事です。
■イベントの企画・運営
生き物の魅力がお客様に伝わるように、イベントを企画するのも飼育員の仕事のひとつです。より水族館を楽しんでもらうためには、エサやり体験や食事タイムの公開、謎解きゲームなどのイベントを企画することが大切です。
■ショー・トレーニング
イルカやアシカなどの海獣とトレーニングをして、ショーをおこないます。演出を考えるのも飼育員の仕事であり、ドルフィントレーナーや海獣トレーナーと呼ばれるトレーニング専門の仕事もあります。
■採集
生き物が生息する川や海に行き、展示する生き物を採集します。
■解説
生き物たちの生態や特徴を、お客様に解説します。施設によっては、次に紹介する「水族館解説員」が担当するケースもあります。
水族館解説員
飼育員の業務のひとつである「解説」を専門的におこなうのが、水族館解説員です。エサやりの時間やイベントなどで、生き物の生態や特徴を説明します。飼育員が解説する水族館もありますが、大きな水族館では専門の解説員がいます。
水族館のお客様には幼稚園児や小学生も多くいます。専門用語を用いて説明しても理解しにくいため、解説員には難しい内容を小さな子どもでも理解できるように説明するスキルが必要です。
水族館飼育員・解説員になるための条件は?必要な能力を解説
水族館飼育員や解説員になるための必須条件はありません。ただし、正社員として働く場合は、四大卒や短大卒が条件となることもあります。ほかにも、人を楽しませるホスピタリティや、潜水したり水槽の清掃をしたりできるスキルも求められます。
さらに「将来、水族館の運営にも携わりたい」という人は、マーケティングを学んでおくとよいでしょう。
マーケティングの知識があれば、水族館の宣伝方法やイベントを企画する際に役立ちます。
水族館飼育員・解説員になるのに資格は不要!?
水族館飼育員や解説員になるための必須資格はありませんが、次の4つの資格を持っておくと就職しやすくなるでしょう。
- スキューバダイビング(Cカード)
- 潜水士
- 獣医師
- 学芸員
水族館によっては、これらの資格を必須条件としていることがあります。それぞれ詳しくみていきましょう。
1.スキューバダイビング(Cカード)
スキューバダイビングのライセンスであるCカードは、ダイビングの知識や技術があることを証明できる資格です。
民間の指導団体が発行しているため国家資格ではなく、認定証という扱いです。
水中での作業も多い水族館への就職では、ダイビングの知識や技術がアピールポイントになるでしょう。
Cカードは、ダイビングショップで学科講習や実習を受けることで取得できます。各ダイビングショップは特定の指導団体に所属しており、団体のルールに沿って講習をおこないます。
取得にかかる費用は、ダイビングショップによって異なりますが、一般的に3~8万円程度です。取得日数は、学科講習が5~10時間程度、海洋実習が2日程度であり、計3日程度で取得できます。
2.潜水士
潜水士の資格は、仕事として水中に潜るときに必要になる資格です。ダイビングライセンス(Cカード)とは異なり、潜水士は厚生労働省が認定する国家資格です。
水族館では大型水槽の清掃や生き物のトレーニングなどで潜水士が活躍します。この資格を有していれば、潜水のスキルをアピールできます。
潜水士の資格取得には、受験資格がないため、誰でも取得試験を受けられます。また、実技試験がなく学科試験に合格すれば資格の取得が可能です。
学科試験では、潜水業務、送気・潜降および浮上、高圧障害、関係法令の4つの科目に関する4時間の試験が実施されます。地方ごとに2~3ヵ月に1回程度の頻度で試験が実施されているため、住んでいる地域の近くの試験日程を確認しておきましょう。
3.獣医師
水族館には、多くの水生生物の健康を守るための獣医師が欠かせません。獣医師免許を持っていると、水族館で生き物が病気やケガをした際に治療できます。
獣医師になるには、6年制の獣医系の大学に進学したうえで、獣医師国家試験に合格しなければなりません。
獣医師の資格を持っていれば、水族館の飼育員以外に水生生物の研究者や農林水産省など、仕事の選択肢の幅が広がります。水族館だけでなく、さまざまな場所で水生生物に関われる人材になれるでしょう。
4.学芸員
学芸員とは、資料を収集・保管し、展示の企画や運営をする専門職のことをいいます。
水族館での学芸員の仕事は、生き物の生態観察やお客様への解説などです。生き物の魅力が伝わるように、水槽や生き物の環境の見せ方を工夫します。
学芸員になる方法は、大きく分けて2つあります。
- 大学で文部科学省令の定める博物館に関する科目の単位を修得する
- 学芸員資格認定を合格する
学芸員資格取得に必要な科目が履修できる大学・短期大学は、290校あります。なお、大学・短期大学に進学しなくても、学芸員資格認定に合格すれば、学芸員になれます。
学芸員資格認定方法には、筆記試験による認定と、これまでの業績の審査によって認定する2つの方法があります。それぞれ受験資格があるため、事前に確認しておきましょう。
水族館飼育員・解説員を目指せる学校
水族館飼育員・解説員として働くためには、学校で生き物について学んでおく必要があります。
ここでは、水族館飼育員・解説員を目指せる学校を紹介します。大学、短大、専門学校に分けてみていきましょう。
1.大学
大学から水族館飼育員・解説員を目指す場合は、次の学部がある大学を選びましょう。
- 水産学部
- 海洋学部
- 農学部
- 畜産学部
- 獣医学
- 動物看護学
- 水産学など
これらの学部がある大学は全国にあります。
また、獣医師を目指す場合は、獣医学科がある大学を選びましょう。
獣医学科がある大学は全国に17校あり、卒業まで6年かかります。
大学と専門学校でお悩みの方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:大学と専門学校どっちがいいの?
2.短大
水族館飼育員・解説員を目指せる短大は、ヤマザキ動物看護専門職短期大学の動物トータルケア学科のみです。
3.専門学校
水族館飼育員・解説員を目指せる専門学校は、全国にあります。
動物全般について学ぶ学校や、自然・野生動物を重視した学校など、専門学校によって特徴が異なります。「水族館で働きたい」と決めている人は、水生生物についてより詳しく学べる学校を選ぶとよいでしょう。
TCA東京ECO動物海洋専門学校では、水生生物に関わる仕事に特化した専攻コースがあります。名古屋、大阪にも展開しています。
実習が豊富な学校を目指すのがおすすめ
水族館飼育員・解説員を目指すなら、実習の多い学校に行くのがおすすめです。生き物が生息する海や川でのフィールドワークでは、生き物の生態をより詳しく学べます。さまざまな水族館で見学をすれば、現場で使える実践的な知識や技術を身につけられるでしょう。
就職の際も、実習で得た多くの体験をアピールできるため、狭き門である水族館への就職でも有利になります。
水族館飼育員・解説員の就職先は?採用試験はある?
水族館飼育員・解説員の主な就職先は水族館となりますが、水族館以外にも次のような就職先があります。
- 海洋生物調査関連施設
- ホエールウォッチング施設
- ダイビングショップ
- 動物園、動物テーマパーク(海獣・水生生物の展示がある施設)
- アクアショップ(熱帯魚ショップ)
水生生物に関する知識は、水生生物の飼育や繁殖、保護、観賞魚の販売をおこなう場などで活かせるでしょう。
水族館でも他の施設でも採用試験があります。
水族館では定期的な採用はなく、欠員が出たら募集をかける施設が多いです。水族館への就職希望者は多いため、倍率が高くなる傾向にあります。チャンスを逃さないためにも、日ごろから採用情報をチェックしたり、試験の準備をしたりするようにしましょう。
また水族館には、公立水族館と民間水族館があります。公立水族館で働きたい場合は、地方公務員試験を受けなければなりません。
ただし、飼育業務を外部委託する公立水族館も増えています。飼育業務を請け負う団体に就職して公立水族館で働くという道もあります。
水族館飼育員・解説員の年収はいくら?気になる給料を解説
厚生労働省による令和5年度の調査では、水族館飼育員の年収は約374万円と公表されています。ただし、勤務地や業務内容によっても給与は変化します。
参考:水族館飼育員 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
水族館飼育員・解説員の1日の生活は?
続いて、水族館飼育員の1日のスケジュールをみてみましょう。ここでは、一例を紹介します。
07:30 出社 08:30 水槽の見回り 08:50 ミーティング 09:00 バックヤードの見回り、掃除 10:00 調餌、エサやり 12:00 昼休憩 13:00 ミーティング 13:30 エサやり、掃除 16:00 水槽の見回り 18:00 日誌を書いて、帰宅 |
水族館解説員も大まかなスケジュールは同じです。ただし、水族館解説員の場合は解説が日中の主な仕事となります。
基本的に残業は多くありませんが、イベントの開催や生き物の体調不良などのトラブルがあるときは残業が増える可能性があります。
また、公立と私立でも勤務時間が異なります。公立水族館は17~18時までの営業が多いのに対し、私立水族館には20時ごろまで開館している施設もあるため、勤務時間も考慮して希望の就職先を検討するとよいでしょう。
水族館飼育員・解説員のやりがいは?楽しいこと・大変なことって何?
水族館飼育員・解説員として働くと、どのような楽しいことや大変なことがあるのでしょうか。それぞれみていきましょう。
水族館飼育員・解説員の楽しいこと
水族館での仕事では、次のような楽しさややりがいがあります。
■毎日新しい発見がある
生き物の飼育や研究をする水族館飼育員・解説員は、毎日のように新しい発見があるでしょう。発見をもとに研究して、成果を出せば評価につながり、大きなやりがいを感じられます。
■お客様に喜んでもらえる
生き物だけでなく、人との関わりも多い仕事です。自分の解説を聞いたお客様が、生き物への理解を深めたり、より強く興味を持ってくれたりすると喜びにつながります。
■大好きな生き物に関われる
何より楽しいのは、大好きな生き物たちに囲まれて仕事ができる点です。水生生物が好きであれば、大変なことがあっても、やりがいを感じながら仕事ができるでしょう。
水族館飼育員・解説員の大変なこと
楽しいだけでなく、大変なことも多いのが水族館での仕事です。多くの飼育員は、次のような点が大変だと感じています。
■生き物たちの死に向き合わなければならない
多くの生き物を飼っている水族館では、毎日のように生き物が死んでしまいます。特に、担当した生き物が死んでしまう時はつらい思いをするでしょう。しかし、すぐに気持ちを切り替えて、次の作業に取り組む必要があります。
■年中あかぎれになりやすい
水族館では水に触れる作業が多く、冬は寒さとの戦いです。飼育員の多くは、1年中あかぎれで、手を真っ赤にしています。
■腰痛に悩まされる場合がある
腰痛になる飼育員もたくさんいます。力仕事が多く、狭いバックヤードでは無理な体勢で作業することもあるためです。
水族館飼育員・解説員に向いているのはどんな人?
大きなやりがいのある水族館飼育員・解説員に向いているのは、次のような人です。
- 生き物が好き
- 人と話すことが好き
- 客観的になれる
それぞれ解説します。
生き物が好き
水族館では、担当する生き物が変わることもあります。「魚が好き」という人も、魚以外の生き物を担当する可能性があるため、水族館にいるすべての生き物に関心を持つことが大切です。
人と話すことが好き
水族館の飼育員は、他のスタッフと連携して業務に取り組む際や、接客の際にコミュニケーション力が求められます。人と話すことが好きな人に向いている職業といえるでしょう。
客観的になれる
生き物に愛情を持って接することは大切です。しかし、ときには感情に流されず、客観的に状況を見て行動する必要があります。
水族館飼育員・解説員の将来性は?
水族館飼育員・解説員の将来性は、明るいといえます。それには2つの理由があります。
1つめの理由は、水族館は世代を問わず人気があり、来場者数が多いからです。少子高齢化の影響を受けにくく、今後も工夫次第で来場者数を伸ばせるでしょう。
2つめの理由は、水族館には海の生き物について学べる場所という役割もあるためです。
水族館のなかには、博物館法の「博物館相当施設」に指定されている施設があります。これは、人々の生涯学習を支援する役割を担い、希少生物の保護や調査、環境教育などに注力していることを示します。
一定の需要が見込まれる水族館で専門性を持って働ける飼育員や解説員は将来性のある仕事といえるでしょう。
まとめ:水族館飼育員・解説員に興味があるなら第一歩を踏み出してみましょう
水族館飼育員・解説員はやりがいがあり、将来も明るい仕事です。
水族館飼育員・解説員になるための必須資格はありませんが、、知識や技術を身につけることで就職が有利になる可能性があります。
水族館に就職するためには、必要な知識やスキルを学校で身につけておくことが大切です。「水族館で働きたい」という人には、TCA東京ECO動物海洋専門学校がおすすめです。
TCA東京ECO動物海洋専門学校では、実習が多く、さまざまな経験を積むことができます。マーケティングや水族館のデザインなどの授業もあるため、水族館で働くうえで必要な知識を幅広く学べます。
水族館飼育員・解説員に興味がある方は、ぜひ水族館プロデュース専攻で専門知識を学ぶことを検討してみてください。
大好きな生き物たちに囲まれた日々に向けて、第一歩を踏み出してみませんか?