「自然体験で関わったインタープリターに興味が湧いたけれど、資格って必要なの?」
「インタープリターになりたいけれど、就職先はどんなところがあるの?」
知名度が上がったとはいえ、就職先や年収、仕事内容など不明点が多いインタープリター。 将来の仕事にするのに不安を感じたり、インタープリターになる方法がわからなかったりすることもあるでしょう。
この記事では、自然と関わるインタープリターの具体的な内容や資格取得の有無、勉強方法など気になることを説明していきます。 インタープリターのぼやけていた部分が明確になるため、将来への一歩を踏み出す参考になるでしょう。
記事の概要
インタープリター(自然解説員)とは
2005年の愛・地球博で知名度があがったインタープリターは、「通訳」という意味から人と自然を繋ぐ架け橋となる存在として知られています。 森や山、自然公園や動植物園、自然体験など広範囲に渡り活動するインタープリターは、一般的な言葉を並べて紙面上で説明するだけではありません。 実際に歩いたり触ったり五感を刺激しながら自然に触れあい、体験を通して自ら発見できるよう、興味や知りたい気持ちを後押しするのがインタープリターの仕事です。
たとえば、春に森を探索すると抜け落ちた鹿の角を見つけたり、緑色のイガに包まれた栗の実を見つけて一足早い秋を感じられたりすることがあります。 普段とは違った形で自然と関わることができるのは、インタープリターの知識や下見があるからこそです。
自然の魅力や大切さに興味を示すきっかけが作れるかどうかは、自然保護活動にも一役買っているインタープリターのインタープリテーション能力にかかっています。
インタープリター(自然解説員)はインタープリテーション能力も大切
インタープリテーションとは、あまり知られていない生態や自然の摂理などを目で見たり触ったり五感を刺激しながら伝えることです。 一般的な知識だけでなく見えない部分を伝えることで、今まで気にも留めていなかった自然や動植物などに興味が湧くこともあるでしょう。
たとえば、自然公園や自然科学館などで開催されている催し物や、知床や屋久島の世界遺産を巡るツアーなどの充実度もインタープリテーション能力にかかっています。
大人から子供まで誰でも理解できるようにかみ砕いて説明し、より深く興味を持って楽しめるようセッティングすることがインタープリターに必要な能力です。
インタープリター(自然解説員)は目指す先が同じ職種が豊富
インタープリターは、自然ガイドや自然解説者、アウトドアガイド、ネイチャーガイド、パークレンジャーなどと一緒に扱われることもあります。
主な職種の活動内容を一覧にしました。
職種 | 活動内容 |
レンジャー ※自然解説員、自然保護官 |
自然環境業務。 動植物の生態や知識を伝え、野鳥やペット動物の保護なども行う。 |
アウトドアガイド | 自然や歴史、文化、自然環境の保全に努めつつアウトドアを体験し、楽しさを感じてもらう。 |
ネイチャーガイド | 土地独自の環境や歴史を紹介しながら、楽しめるツアーを企画し、個人ではなかなか行けない場所なども案内する。 |
パークレンジャー | 全国の国立公園の保護や調査、動植物の保護や里山の保全などを行い、自然観察や解説などをして自然環境を学習してもらう。 |
森林インストラクター | 森林の仕組みや動植物の生態を通して、自然保護の大切さを伝えつつ、レクリエーションを楽しんでもらう。 |
動物飼育員 | ショーや解説を通して、生態や知識を伝えて興味を持ち楽しんでもらう。 |
水族館スタッフ | 触れあい体験を通して目で見て触って五感を刺激し、生態や知識を分かりやすく説明しつつ楽しんでもらう。 |
どの職種も自然と深く関わり楽しむことを伝えるため、最終目的地は同じ。違うことといえば、資格が必要な職種と不要な職種があることです。
インタープリターに特別な資格は必要ありません。
そのため、活動場所によっては知識豊富なほかの職種がインタープリターとして業務することもあります。
インタープリター(自然解説員)は資格がなくても活動できる
インタープリターには、公的な資格はありません。
必要なのは、見たり触ったりしながら自然から学び取れることを分かりやすく表現して興味関心を持ち、感受性を刺激できるようになる話術や知識です。
地域の活性化を目的としたエコツーリズムもその一つで、知識豊富な地元の人たちがインタープリターとして積極的に活動している場合もあります。
また、自然の素晴らしさをより多くの人に届けたい人たちが、本業の合間に副業として活動していることもあります。
インタープリターに資格は必要ありませんが、自然に興味や関心を持ってもらったり自然環境保護の重要性を知ってもらったりするためには、心に響く体験を提供できる豊富な知識や経験が必要です。
インタープリター(自然解説員)に活かせる資格や知識を取得する3つの方法
インタープリターは資格こそありませんが、知識や経験はとても重要です。
独学で充実した知識や活かせる資格を得るには限界があるため、効率よく取得できる3つの方法を紹介します。
- 専門学校に通う
- 自治体や各団体が行っている養成講座を受講する
- 環境省のインタープリター入門講座を受講する
順番に確認していきましょう。
①専門学校に通う
インタープリターに必要な知識や活かせる資格を取得しやすいのは、なんといっても専門学校に通うことです。 自然や動植物などの知識や役立つ資格を持つことは、インタープリターをする上でとても重要です。
たとえば、野生動物保護専攻や恐竜・自然史博物専攻、自然環境保護コース、海洋生物科など、専門学校によりコースは異なります。
しかし、どのコースもインタープリターになるための知識や今後に活かせる資格を取得するのに効率的に勉強できる環境が整っています。
インタープリターに活用できる資格は多種多様。 取得していると話の幅が広がり、自然に興味を持つきっかけ作りができる資格をいくつか紹介します。
- アニマルコーディネーター
- JESC認定コミュニケーションスキルアップ検定
- プロジェクト・ワイルドエデュケーター
- エコツアーガイド
- 森林インストラクター
専門学校は、専攻する分野や学校により2年制や4年制など年数が異なります。
そのため、一概には言えませんが授業料や施設維持費、実習費などを含めると1年間で必要な費用は120万~160万円ほど。2年制で250万円弱、4年制で多くて600万円ほどの専門学校費用が必要です。
しっかりと知識や役立つ資格を取得し、就職サポートも行ってくれる専門学校で、活躍できるインタープリターの土台作りをするのもよいでしょう。
②自治体や各団体が行っている養成講座を受講
インタープリターは、自治体や各団体が独自で行っている養成講座があります。
開催している講座の多くがNPO法人主催のため、料金は比較的安く設定されています。そのため、初めての人でも講座を受けやすいのが特徴です。
たとえば、各自治体独自で行っている講習会では、自然体験プログラムを実施できるノウハウを身につける研修が行われ、実践に活かしやすくなっています。
また、一般社団法人 日本インタープリテーション協会では、インタープリテーション発祥の地、アメリカの手法をベースにしたインタープリタートレーニングセミナーが3泊4日で受けられます。
※65,000円ほど
料金は2,000円ほどのところもありますが各団体や内容の濃さにより料金が異なるため、講座を受ける際はよくチェックしてから受講しましょう。自治体や各団体が行う講座とあって、受講後は自然公園や施設で活躍したり、学校や地域のイベントなどに参加する機会が得られたりします。
③環境省が発信しているインタープリター入門講座を受講
環境省には、環境人材育成・認定等事業データベースに登録されている指導者養成セミナーがあります。資格の取得はできませんが、参加者に対して適正な働きかけができるノウハウが学べます。
たとえば、過去には下記の講座が実施されてきました。
- 清里インタープリターズキャンプ
- スクールインタープリター養成入門講座
- インタープリター入門講座
講座を受けたあとは、自然学校やビジターセンター、教育現場、ボランティア活動などを通して多くの人たちに自然と人との関わり方や楽しみ方を伝えていきます。
講座内容は座学だけでなく、実際にプログラムを作ったり体験したりして、さまざまな手法が学べます。
また、1日で修了する講座もあれば、数日かかる講座もあるなど講座日数は内容の濃さにより変化するので注意が必要です。受講料金も1万~4万円ほどと幅があるため、環境省のホームページで詳細をチェックするとよいでしょう。
インタープリター(自然解説員)に向いている人
インタープリターに向いている人は、たとえば以下のような人たちです。 自分に当てはまる部分があるか確認してみましょう。
- 話術に長けている人
- 年齢に合わせた表現や行動を促せる人
- 緊急時に迅速な対応ができる人
- 自然や人と接するのが好きな人
- 参加者との一体感を作り出せる人
人と関わることが大好きな人が自然の大切さや楽しさなどを解説し、一緒に体験するからこそ、参加者たちの心に深く刻みつけられ自然を愛する輪が広がっていきます。
インタープリター(自然解説員)として活躍できる就職先
活動場所が豊富なインタープリターの就職先は、分類すると以下の4つに分けられます。
- CSRのある企業
- 動物園や水族館などのスタッフ
- 専門団体
- 起業
順番に確認していきましょう。
CSRのある企業
環境保護にも力を入れている企業によっては、事業活動の一環としてCSRに力を入れ、インタープリターを募集しているところもあります。CSRとは企業の社会的責任のことで、環境活動やボランティアなど事業活動を通して自主的に社会に貢献する責任のことです。
たとえば、中部電力はCSRの一環として2019年に東山植物園で、「ふわふわ」「チクチク」などから連想されるキーワードを元に、園内を探索して該当する植物を見つけるフィールドビンゴを開催しました。
また、トヨタ自動車では、トヨタの森で四季折々のイベントを開催したり、トヨタ白川郷自然学校で子供キャンプやインタープリテーションツアーなどを開催したりしています。
活動しているインタープリターは、企業が正社員として募集している場合や、イベントごとに募集している場合などさまざまです。CSR活動を行っている企業ではインタープリターを募集している場合があるため、就職先を選ぶ目安の一つとして考えるのもよいでしょう。
動物園や水族館などのスタッフ
動物園や水族館などでも、インタープリターが活躍しています。
たとえば、夜の動物園では、日頃見られない動物たちの生態をインタープリターが伝えるイベントが開催されていることがあります。
期間限定の催し物は、時期になるとインタープリターの募集がある場合や、園内スタッフがインタープリターとして業務する場合などさまざまです。
また、水族館の水槽で泳ぐ生き物を見たり触ったりしながら五感を使ってあらたな発見ができるのも、インタープリターの解説があるからこそです。
ほかにも、博物館や野生動物を保護する自然環境保護団体など、インタープリターとして活躍できる場はたくさんあります。
専門団体
専門団体から就職先情報を得たり、ボランティア活動したりする方法もあります。
たとえば、一般社団法人 日本インタープリテーション協会のメーリングリストに参加すると、不定期で募集される就職先情報をいち早く得ることができます。活動場所は、国立公園や国定公園などのビジターセンターや、森林公園、自然学校、里山、科学館、郷土資料館、博物館などのミュージアム、生物園など。
さらに、ボーイスカウトや林間学校、子供会イベントなどを通して自然や歴史に触れて体験し、自ら発見する楽しさを見いだせる環境を提供する活動なども行っています。
各自治体を通して専門団体がインタープリターの募集をしている場合もあるため、専門団体でボランティア活動を行って腕を磨き、就職先を探すのも一つの方法です。
専門団体が企業のCSR活動を担っていることもあるため、いろいろな場所で活動したい場合にもよいでしょう。
起業
インタープリターは身一つでスタートできるため、起業しやすい利点があります。小規模運営で融通も利きやすくなる起業は、自分で仕事を取れる営業スキルが必要です。
そのため、カリスマ性があり、人を惹きつける話術や知識などを兼ね備えていると仕事も得られやすくなります。
しかし、営利目的で起業している人ばかりではありません。自然と関わることに魅力を感じ、本業の合間の副業として活動している人もいます。
インタープリターは営利目的ではなく、趣味やボランティアの一環として活動している人が多い傾向があります。
インタープリター(自然解説員)の気になる年収
インタープリターの月給は、17万円ほど。単純計算でボーナスを考慮せず計算すると、年収は200万円ほどです。
また、若干月給が高めに設定されている企業は、19万円ほど。ボーナス抜きで計算した年収は230万円ほどになります。
出典:厚生労働省
厚生労働省から発表されている産業別の年収を確認すると、インタープリターが該当するサービス業は200万~300万円ほどの間に位置しています。
年収はほかの産業に比べて少なめですが、環境保護に力を注いでいる企業や動植物園、学校の体験学習など多くの場所で活躍しているため、なくてはならない職種です。
国や県も重要視しているインタープリターは、年収よりやりがい重視の仕事といえるでしょう。
インタープリター(自然解説員)は日々の体験でやりがいを実感できる
インタープリターの年収はサービス業のなかでは普通レベルの職業ですが、職業別で確認すると低く感じられます。
しかし、インタープリターは野鳥や稀少動物、知床や屋久島などの自然保護にも努めている職業で、国も力を注いでいる分野です。
たとえば、自然体験では楽しかったできごとが自然に興味を持つきっかけを与えたり、自然を保護する大切さを知ってもらえたりします。
また、自然体験で関わった子供たちに「将来、お兄ちゃん、お姉ちゃんみたいな職業に就きたい」と言われたときには、インタープリターをしていてよかったと心から感じることができるでしょう。
見るだけではわかり得ない自然の心の声を分かりやすく解説して感受性を刺激し、自然と人とを結びつけるインタープリター。一緒に体験していくなかで見られる参加者の笑顔も、やりがいを実感できる瞬間の一つになるでしょう。
まとめ:インタープリター(自然解説員)になって自然の楽しみ方を提供しよう
インタープリターは、公園や森林、里山の散策やキャンプ、アウトドア、博物館など広範囲に渡り活動できるのが特徴です。
また、野外の仕事だけでなく、室内にある展示品の説明や展示物作りなども行っています。
認知度が高くなってきたとはいえ、ほかの職業に比べるとまだまだ浸透されていないインタープリター。
「インタープリターになって、需要はあるの?」と、気になる人もいるでしょう。インタープリターは、気づいていないだけで全国にたくさんの就職先があり、私たちはとても多くの解説員と関わっています。
自然と向き合い仕事するインタープリターに公的な資格はありません。ですが、知識や技術は必要です。
TCA東京ECO動物海洋専門学校の博物館・恐竜自然史専攻やECO自然環境クリエーター専攻では、校外実習や企業実習などさまざまな実習を通して、将来の仕事に必要な知識や技術が学べます。
また、インタープリターの知識の糧となる、間接的な資格の取得も目指せます。
さらに、一見仕事からかけ離れていそうなCG制作やレプリカ制作、小動物の飼育方法から環境保護を目的とした調査活動を行うための技法まで、幅広い知識の習得も可能です。
環境保護にも力を入れているインタープリターは、国の環境保護活動にも一役買っています。
今後、さらに重要視されると予想できるインタープリター。
想像力や感受性を刺激できる知識や技術を体系的に学べ、より深い情報を提供するための勉強ができるTCA東京ECO動物海洋専門学校で、インタープリターを目指してみましょう。