「畜産農家はどのような仕事をするの?」
「畜産農家になるには進学しなければいけないの?」
畜産農家に興味がある人は、このような疑問を持っているのではないでしょうか。
そこで今回は、畜産農家の仕事内容や畜産農家になる方法、おすすめの資格などを紹介します。
畜産農家になりたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
記事の概要
畜産農家とは?
畜産農家とは、牛や豚、鶏などの家畜を飼育し、乳製品・肉・卵などを生産・販売する仕事です。
畜産農家は、家畜の健康状態の管理と成長具合のコントロールをしながら製品を出荷しています。そのため、家畜についての幅広い知識が必要です。
また、動物はストレスや温度変化に弱く、病気にならないためにも毎日動物を管理しなくてはなりません。畜産農家は、休みなく働ける体力が必要な仕事といえるでしょう。
畜産農家の仕事内容
畜産農家の主な仕事は、飼育している動物の世話とその環境の管理です。具体的な仕事内容は、動物の種類や産業分類によって異なります。
ここでは、4種類の産業分類にわけて仕事内容を紹介します。
- 酪農場
- 繁殖牛舎・肥育牛舎
- 養豚場
- 養鶏場
それぞれの仕事内容を詳しくみていきましょう。
酪農場
酪農は牛の乳を搾り、牛乳や乳製品の製造・販売を行う仕事です。
酪農場での主な仕事内容を紹介します。
- 搾乳
- 子牛の世話
- 牛舎の掃除
- エサやり
- 健康チェック
- 飼料作り
酪農場で最も重要な仕事は、搾乳といえます。なぜなら、酪農場では牛の乳を搾って乳製品や牛乳の製造を行うためです。牛の乳が絞れなければ商品を販売できなくなり、経営が困難になるでしょう。
搾乳は、朝夕にわけて1日2回実施します。最近では多くの酪農場でミルカーと呼ばれる搾乳機が導入されているため、手作業で搾乳することはほとんどありません。
酪農場では、搾乳に多くの時間をかけることになります。
繁殖牛舎・肥育牛舎
繫殖牛舎・肥育牛舎は、牛を飼育して牛肉の生産を行っています。繫殖牛舎では、母牛の管理や子牛の出産・出荷などが主な仕事です。肥育牛舎は、繫殖牛舎から購入した子牛を育てて、牛肉として出荷します。
繫殖牛舎・肥育牛舎の仕事内容の一例は、以下のとおりです。
- エサやり
- 牛舎の掃除
- 牛の健康管理
- 牧草・飼料の管理
- 去勢・種付け
繫殖牛舎・肥育牛舎で重要な仕事は、牧草・飼料の管理です。牛肉の品質は、牛が食べている飼料によって決まります。そのため、牛に与える飼料は、生育段階によって種類や配分を変更しています。
健康な食肉牛を育てるために、牧草と飼料の管理は欠かせない仕事といえるでしょう。
酪農家が休みをとって働けない日に、代わりに搾乳やえさやりなどの牛の世話をする「酪農ヘルパー」についてはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:酪農家の助けになる酪農ヘルパーになるには?資格や給料、仕事内容を紹介!
養豚場
養豚は、食肉となる豚の繁殖や出荷をする仕事です。
養豚場での主な仕事内容は、以下のとおりです。
- エサやり
- 豚舎の掃除
- 豚の分娩確認
- 豚舎の温度・換気管理
- 飼料の管理
養豚場では、温度や換気を管理したり、豚舎を掃除したりなどの衛生管理が最も重要とされています。なぜなら、豚はとてもきれい好きで繊細な生き物だからです。
衛生管理が行き届いていない豚舎では、豚が感染症にかかり、健康に育たない可能性があります。健康で品質のよい豚を育てるためには、豚舎を清潔に保つことが大切です。
養鶏場
養鶏は、卵を生産する採卵用養鶏場と、鶏肉を生産する食肉用養鶏場の2つにわけられます。採卵用養鶏場では、卵を産む雌鶏のみが飼育されているのが特徴です。
養鶏場の主な仕事内容を紹介します。
- エサやり
- 鶏舎の掃除
- 鶏の管理
- 鶏舎の温度管理
- 集卵
鶏は早朝に卵を生むので、採卵用養鶏場では朝一番に集卵を行うのが一般的です。午後には集卵した卵に傷がないか奇形ではないかなどをチェックして出荷します。
食肉用養鶏場では、鶏と鶏舎の管理が主な仕事です。鶏は温度や環境の変化にとても敏感です。常に鶏舎の状態を管理し、鶏にストレスを与えないような環境を作ることを大切にしています。
畜産農家のやりがい
畜産農家のやりがいは、動物の世話や管理に手間をかけるほど、質の高い製品が出荷できることです。
飼料の配分を変更したり、動物たちが過ごす場所を清潔に保ったりと手間をかけることは、畜産農家で働く人にとって負担となるでしょう。しかし、手間をかけることで品質のよさがコンテストで評価される可能性が高くなります。
また、畜産農家は、日本の食卓を支えていることも大きなやりがいです。
農林水産省のデータによると、1960年度と2019年度で1人あたりの肉の消費量を比較すると、約10倍に増加していることがわかります。年々、豚肉・牛肉・鶏肉の国内のニーズが高まっており、畜産農家は日本の食生活を支えている仕事です。
参考:農林水産省
畜産農家になるには?
畜産農家になるために、必須となる学歴はありません。しかし、家畜の世話や畜産農業の経営は、飼育する動物の特性や畜産についての知識がなければ難しいと考えられます。
そのため、畜産農業になるためには、以下のような方法で最低限の知識を学びましょう。
- 専門学校に通う
- 大学に通う
- 家業を継ぐ
それぞれの方法を詳しく解説します。
専門学校に通う
専門学校は、実践を通して畜産の知識やスキルを学びたい人におすすめです。
動物の専門学校では、研修や実習の授業が多く、さまざまなスキルを身につけられます。畜産農家に特化した講師が在籍している場合もあり、効率よく畜産について学ぶことが可能です。
TCA東京ECO動物海洋専門学校では、「動物園・動物飼育専攻」で畜産について学べます。学校内には動物園飼育実習室があり、さまざまな動物の飼育管理を通して、知識を深められるのも魅力です。
また、牧場での実習時間も確保されており、畜産に関する実践的なスキルを学びやすい環境といえるでしょう。
酪農ヘルパーとして活躍する東京ECOの卒業生のインタビュー動画も合わせてご覧ください。
大学に通う
畜産についての知識を学ぶためには、大学に通うという方法もあります。
大学は、専門学校と比べると実習よりも座学の時間が多いでしょう。専門分野を深く追求・研究できる環境が整っているのが特徴です。
また、卒業後に企業に就職する際に、専門学校卒業の人よりも基本給が高い可能性があります。
畜産について深く学びたい分野がある人には、大学への進学がおすすめです。
家業を継ぐ
家業で畜産農家をしている場合は、高校卒業後に進学をせずに、そのまま畜産農家を継ぐことが可能です。家業を継ぐ方法は、一番短期間で畜産農家になれる方法といえます。
ただし、今まで家業の手伝いをしておらず、畜産や動物についての知識がない場合には、大学や専門学校へ進学して、畜産について学ぶことをおすすめします。
畜産農家は動物を相手にする仕事のため、最低限の知識が必要です。知識やスキルがないまま畜産農家になっても、仕事ができない可能性が高いでしょう。
畜産農家に資格は必要?
畜産農家は、仕事内容によって資格が必要な場合があります。
牛や豚などの家畜を育てる際には、都道府県が年1回開催する「家畜商講習会」の全過程を修了し、資格を取得しなければなりません。
また、農林水産省が認定している「家畜人工授精師」の資格も畜産農家の仕事に役立ちます。
家畜人工授精師は、家畜の人工授精や受精卵の移植を行う技術があることを証明する資格です。牛や豚の繁殖・出産を行う畜産農家にとって取得しておいたほうがよい資格といえます。
家畜人工授精師の資格は、講習会を受講して修業試験に合格したら取得可能です。
さらに、飼料や家畜の運搬・移動を行うために、「普通自動車運転免許」の取得は不可欠でしょう。
畜産農家に向いている人
畜産農家に向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 動物が好きな人
- 小さな変化に気づける人
- 体力がある人
- ルーティンワークが好きな人
畜産農家は動物と深く関わる仕事のため、動物が好きであることは必須条件といえます。
また、畜産農家の仕事は、基本的に毎日同じ時間帯に同じ作業を行うため、ルーティンワークが得意な人が向いています。基本的に大きい動物のお世話をするので、体力も必要です。
畜産農家として、とくに大切なことは動物たちの小さな変化に気づくことです。日々動物の世話や管理をしていても、動物が突然不調になるケースは少なくありません。
動物たちのいつもと違う様子に気づけると、早めに対処ができ、動物の命を救うことにつながります。
畜産農家の平均年収は?
畜産農家の平均年収は、経営方法や産業分類によって異なります。
ここでは、農林水産省が公表しているデータをもとに、経営方法ごとの平均年収を紹介します。
- 個人経営の場合
- 法人経営の場合
それぞれの経営方法ごとに、酪農業・繫殖牛舎・肥育牛舎・養豚・採卵用養鶏・食肉用養鶏の6つにわけて年収を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
個人経営の場合
個人経営の収益から経営費を引いた農業所得は、以下のとおりです。
営農分類 | 農業所得 |
---|---|
酪農業 | 362万5,000円 |
繁殖牛舎 | 551万円 |
肥育牛舎 | 151万1,000円 |
養豚 | 360万9,000円 |
採卵用養鶏 | 165万7,000円 |
食肉用養鶏 | 270万円 |
個人経営の畜産農家は、法人経営よりも比較的規模が小さく、所得もそこまで高額ではありません。給与所得者1人あたりの平均給与が461万円であることと比較すると、やや低めの所得といえるでしょう。
参考:農林水産省
参考:国税庁
法人経営の場合
法人経営の農業所得は、以下のとおりです。
営農分類 | 農業所得 |
---|---|
酪農業 | 1,812万1,000円 |
繁殖牛舎 | 342万円 |
肥育牛舎 | 186万6,000円 |
養豚 | 2,067万2,000円 |
採卵用養鶏 | 3150万6,000円 |
食肉用養鶏 | 582万円 |
企業経営の畜産農家は、規模が大きく、所得も多くなるのが特徴です。ただし、規模が大きくなるほど設備費や飼料にかかるコストも増えるため、収益がすべて従業員の給料に反映されることはないでしょう。
実際に畜産を行っている企業の求人をみると、月給約19万〜35万円が平均的です。そのため、企業経営の畜産農家になると、年収は約228万~420万円ほどになります。
参考:農林水産省
参考:農業ジョブ
畜産農家は将来性がある?
現在、飼料代の値上がりや温暖化による異常気象などの影響を受け、日本の畜産業は厳しい状態が続いています。
しかし、日本の畜産業が完全になくなることはないでしょう。なぜなら、日本国内での肉の消費量は増加傾向にあるためです。肉の消費量の増加に、日本国内の生産量が追いついておらず、現在は不足分を輸入に頼っています。
消費量が生産量を上回っているため、日本の畜産業がなくなると、日本の食卓から肉が消える事態になりかねないでしょう。
また、日本で育てられた豚や牛は、ブランド肉として海外でも人気があります。そのため、日本の畜産農家が完全になくなるとは考えにくいでしょう。
まとめ:畜産農家は日本の食卓を支える仕事
畜産農家は、主に家畜のお世話や管理を行い、肉・乳製品・卵などを出荷する仕事です。
畜産農家になるために必要な学歴はありません。しかし、動物の命に関わる仕事なので、動物や畜産に関する知識は学ぶ必要があります。
畜産について実践を通して学びたいという人には、専門学校がおすすめです。専門学校は実習や研修の時間が多く確保されており、より実践的なスキルを身につけることができます。
TCA東京ECO動物海洋専門学校の「動物園・動物飼育専攻」では、畜産に関わる知識やスキルを学ぶことが可能です。牧場への実習もカリキュラムに組まれており、専門的な知識を学べる環境が整っています。
TCA東京ECO動物海洋専門学校で知識やスキルを身につけて、畜産農家を目指してみてください。