動物が好き、ペットを飼っているなどの理由から、動物愛護について強い関心があり、動物を保護する仕事がしたいと考えている人もいるのではないでしょうか。
動物保護の仕事には、犬猫の保護団体から野生動物を守る施設までさまざまな職種があります。愛玩動物看護師やペットトレーナーなど、一見関わりが少なそうな職行も動物保護に繋がる重要な役割を担っています。
本記事では、動物保護に関わる具体的な仕事内容や職種、就職方法について詳しく解説します。動物保護の仕事について知り、自分に合った職種を選びましょう。
記事の概要
動物保護団体について
動物保護団体は、大きく2種類に分類されます。
- 行政機関
- 民間団体
それぞれの団体の違いについて詳しく解説します。
行政機関
行政機関とは、国や地方自治体が運営している施設です。日本にある動物保護の行政機関としては、「保健所」と「動物愛護センター」が広く知られています。
保健所は各都道府県や市区町村に設置され、犬や猫、小動物の保護・管理をする施設です。収容された動物は一定期間、安全な環境のもとで管理され、その後、動物愛護センターへと移送されます。
保健所では、収容動物の情報公開や譲渡募集はおこなっていますが、譲渡会やしつけ教室など、新しい飼い主を見つけるための活動は業務範囲に含まれていません。
一方、動物愛護センターは、動物たちの新しい飼い主を見つけるためにさまざまな取り組みを実施している施設です。殺処分ゼロを目指し、譲渡会の開催・保護動物カフェの運営・飼い主向けのしつけ相談など、動物と人がより良い関係を築くための活動に力を入れています。
民間団体
民間の動物保護団体は、NPOやNGOなどの非営利団体として法人を設立して活動している場合もあれば、法人を設立せずに個人のボランティアとして活動している場合もあります。
非営利団体とは、利益を第一の目的とせずに社会貢献活動を軸に運営している団体です。収容されている犬・猫を引き出し、譲渡会を開催したり、SNSで里親募集をおこなったりと、行政機関だけでは対応しきれない部分を補う役割を果たしています。
法人を設立していない団体でも、基本的な取り組みは非営利団体と変わりません。いずれの団体も、行き場のない動物を減らし、より多くの命を救うことを目的に活動しています。
また、民間の動物保護団体には、犬や猫を保護する団体だけでなく、野生動物の保護を専門におこなう団体もあります。例えば、交通事故で傷ついた鳥や鹿などを保護・治療し、自然に返すことを目的とした施設や、地域の生態系を守るために密猟防止や調査をおこなう団体も存在します。このような野生動物の保護活動は、生態系のバランスを維持するために重要な役割を果たしています。
動物保護の仕事とは?具体的な職種や役割を知ろう
動物保護の仕事には、行き場のない犬や猫を保護する仕事や、鳥などの野生動物を保護する仕事などがあります。
ここでは、動物保護に関わる職種を3つ紹介します。
- 動物愛護センター職員
- 民間の動物保護団体スタッフ
- 野生動物リハビリテーター
それぞれの職種の役割をみていきましょう。
動物愛護センター職員
動物愛護センターは、飼育困難になったペットの引取りや譲渡先探しなどをおこないます。ペットの放棄・遺棄をなくすための啓発活動や、しつけ教室を実施している施設もあり、殺処分ゼロを目指した取り組みに力を入れています。
職員は、しつけ教室や啓発活動を通じて適正飼育の大切さを伝え、社会の意識を変える役割も担っているといえるでしょう。
民間の動物保護団体スタッフ
民間の動物保護団体スタッフは、行き場のない犬猫の保護や、愛護センターに収容された動物の引き出し、譲渡先探しなどをおこなっています。
民間の動物保護団体スタッフは、保護した動物の心と体のケアをおこない、健やかに暮らせるよう支援しています。行政機関では手が回らない人馴れの訓練から心のケアまで実施しており、動物たちと向き合う時間が長い仕事です。
野生動物リハビリテーター
野生動物リハビリテーターは、人為的な原因によって傷ついた野生動物を保護し、野生に返すまでお世話やリハビリをおこなう仕事です。鳥や鹿などさまざまな野生動物と接する機会が多いのが特徴です。
野生動物リハビリテーターは、健康な野生動物の保護・調査も実施しており、野生動物を守るための根本対策にも取り組んでいます。動物の世話をするだけでなく、生態系のバランスを維持する重要な役割も担っています。
その他の職種
紹介した職種以外にも、TCA東京ECO動物海洋専門学校で目指せる職種は、全て動物保護・動物愛護につながっています。例えば愛玩動物看護師は、動物の健康管理を通じて病気の早期治療を行う役割を担っています。飼い主に正しい知識を伝えることで、知識不足による飼育放棄や遺棄を防ぐことに貢献しています。
ペットトリマーもトリミングを通じて健康状態の異変や身体の変化を捉え、病気の早期発見や飼い主からの虐待を防ぐことが可能です。ドッグトレーナーが正しいしつけを行なうことで動物の問題行動を改善し、動物の手放しなども防ぐ役割をになっています。
また犬猫といったペットに関わるだけでなく、野生動物の保護や調査に繋がる職であるネイチャーガイドやベアドッグハンドラーなども目指すことができます。
ネイチャーガイドは、エコツアーなどを通じて野生動物への正しい接し方や生態系について伝えることで、生息地の保護や参加者の環境に対する意識を高めることに貢献しています。また、ベアドッグハンドラーはクマと人間が接触しないようにクマを森に戻し、人間とクマが安全に共存するための環境作りに努めています。
動物保護の現場でも重要な役割を担う職種といえるでしょう。
動物保護団体の主な仕事内容
動物保護の仕事には、さまざまな業務があります。ここからは、3つの団体別に詳しい仕事内容を解説します。
動物愛護センター職員の仕事
動物愛護センター職員の主な仕事内容は、下記のとおりです。
- 飼育困難になったペットの引取り
- 迷い犬や猫の保護・返還
- 移送されてきた動物の世話
- 里親探し
- 殺処分ゼロを目指した普及啓発活動
- しつけ教室や譲渡会などの開催
- ペットの災害対策
- 狂犬病予防接種
動物愛護センター職員の仕事は、里親探しに加え、予防接種の実施や災害対策など多岐にわたります。動物を譲渡して終わりではなく、啓発活動やしつけ教室などを通して、適正飼育を飼い主に伝えるのも職員の大切な仕事です。
民間の動物保護団体スタッフの仕事
民間の動物保護団体スタッフは、行政機関と連携しながら以下のような仕事をしています。
- 飼育困難になったペットの引取り
- 保健所・愛護センターから犬や猫の引き出し
- 保護したペットの世話
- 里親探し
- 譲渡会の開催
- SNSでの発信
- 動物に関する相談
- 不妊去勢手術費用の補助
民間の動物保護団体のスタッフは、動物に関する相談業務や不妊去勢手術費用の補助などを通して、不幸な動物が増えないような取り組みもおこなっています。
野生動物リハビリテーターの仕事
野生動物リハビリテーターの仕事内容の一例を紹介します。
- 保護した野生動物の世話とリハビリ
- 事故が起きた原因の究明
- 健康な野生動物の保護と調査
- 普及啓発活動
野生動物リハビリテーターは、獣医ではないためケガや病気の治療はできません。治療の補助をしたり、治療後のリハビリをしたりするのが主な仕事です。
野生動物の世話以外にも、健康な野生動物の調査や野生動物・自然環境についての普及啓発活動もおこなっており、野生動物と人の共生をサポートする役割があります。
動物保護の仕事に就職するには?
動物保護の仕事には、さまざまな団体があることがわかりました。では、動物保護団体に就職するにはどのような方法があるのでしょうか。
ここでは、動物保護の仕事に就職する方法を2つ紹介します。
- 公務員試験に合格する
- アルバイトやボランティアとして活動する
それぞれの方法を詳しく解説します。
公務員試験に合格する
動物愛護センターの職員は地方公務員のため、公務員試験に合格する必要があります。
動物愛護センターで働くのに特別な資格を取得しておく必要はありません。公務員試験の受験資格をクリアしていれば、動物に関する資格がなくても受験できます。ただし、獣医師や愛玩動物看護師などの資格を持っていれば、採用に有利になる可能性もあります。
公務員試験に合格しても、動物愛護センターに必ず配属されるとは限りません。仮にセンターに配属された場合も、数年後に違う部署に異動になる可能性もあると認識しておきましょう。
アルバイトやボランティアとして活動する
民間の動物保護団体の場合、アルバイトやボランティアでスタッフを募集していることがあります。民間団体は、寄付や補助金などによって運営している施設も多く、人件費が限られています。そのため、正社員を募集している施設は少ないでしょう。
また、野生動物リハビリテーターも、正社員の募集はほとんどありません。まずは、アルバイトやボランティアでの活動から始めるのが現実的です。
ただし、動物保護に役立つ資格を持っていたり、保護施設での実務経験がある場合は、正社員として採用される可能性が高くなります。収入を安定させたい人は、資格取得や実務経験を積むことから始めましょう。
動物保護の仕事に役立つ資格
動物保護の仕事に資格の取得は必須ではありません。ただし、動物の世話に役立つ資格を持っていれば、施設に採用されやすくなったり、実務に活かせたりとさまざまなメリットがあります。
ここでは、動物保護の仕事に役立つ資格を5つ紹介します。
- 獣医師
- 愛玩動物看護師
- JKC公認トリマー
- 愛玩動物飼養管理士
- 野生動物リハビリテーター
それぞれの資格の取得方法や、取得までにかかる日数などを詳しくみていきましょう。
獣医師
獣医師免許は、獣医学課程のある大学で6年間学び、国家試験に合格すると取得できる資格です。
獣医師免許の詳細をみていきましょう。
受験資格 |
|
取得方法 | 獣医学課程を修了し国家試験に合格する |
資格取得までにかかるおおよその期間 | 最短6年 |
受験料(税込) | 13,900円 |
保護した動物のケガ・病気の治療や健康管理に獣医師の存在は欠かせません。そのため、就職に有利に働く可能性が高い資格といえます。
参考:農林水産省
愛玩動物看護師
愛玩動物看護師は、2019年6月に制定された「愛玩動物看護師法」によって認められた国家資格です。
愛玩動物看護師の資格の詳細は、下記のとおりです。
受験資格 | 農林水産大臣と環境大臣が指定する科目を修了し、卒業する |
取得方法 | 農林水産大臣と環境大臣が指定する科目を修了し、国家試験に合格する |
資格取得までにかかるおおよその期間 | 最短3年 |
受験料(税込) | 27,200円 |
愛玩動物看護師は、採血・投薬・採尿などの医療行為を獣医師の指示を受けながらおこなうことができます。動物医療についての幅広い知識を持つため、動物保護団体でも活かせる資格です。
参考:環境省
愛玩動物看護師の資格については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:国家資格「愛玩動物看護師」とは?なる方法や仕事内容について徹底解説
JKC公認トリマー
JKC公認トリマーは、一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)が認定している、トリマー資格のなかで知名度の高い資格です。C級・B級・A級・教士・師範の5種類に分かれており、まずはC級の資格取得から目指します。
JKC公認トリマーC級の資格について、詳しくみていきましょう。
受験資格 |
|
取得方法 | 実技試験と筆記試験に合格する |
資格取得までにかかるおおよその期間 | 約1年~2年 |
受験料(税込) | 5,400円 |
トリマーは、シャンプーやカットなどを通して、犬や猫を清潔に保つ役割があります。犬や猫がきれいになると、新しい里親を探しやすくなります。皮膚や被毛を清潔に保てることで病気の予防にもなり、トリマーは動物保護の現場で欠かせない存在といえるでしょう。
愛玩動物飼養管理士
愛玩動物飼養管理士は、公益社団法人日本愛玩動物協会が認定する資格です。2級と1級に分かれており、初めて受験する場合は2級の取得を目指します。
愛玩動物飼養管理士の資格の詳細は、下記のとおりです。
受験資格 |
|
取得方法 | 日本愛玩動物協会の通信講座を受講し、認定試験に合格する |
資格取得までにかかるおおよその期間 | 約6ヵ月以上 |
受験料(税込)・認定登録料(税込) | 2級:32,000円・8,000円 |
1級:34,000円・20,000円 |
愛玩動物飼養管理士は、動物に関する法律や人と動物の関係学、犬・猫・小動物に関する知識などを学べる資格です。動物保護団体では、さまざまな動物の世話をすることになるため、実務に活かせるでしょう。
野生動物リハビリテーター
野生動物リハビリテーターの資格は、野生動物リハビリテーター協会や野生動物救護獣医師協会などの団体が認定している資格です。
野生動物リハビリテーター協会の資格は、初級と中級の2種類です。座学や実習などの講座を受講して、認定試験に合格すると野生動物リハビリテーターの資格を取得できます。
野生動物救護獣医師協会が認定する資格は、2級と1級の2種類に分かれています。講習会を受講して実習を終えたあと、小論文を提出すると資格を取得可能です。
野生動物を保護している施設では、野生動物の専門知識がある野生動物リハビリテーターの資格は不可欠といえます。
動物保護の仕事の給料と将来性
動物保護の仕事をしたいと考えている人は、給料や将来性について不安に感じることもあるかもしれません。
ここからは、動物保護の仕事の給料と将来性を解説します。動物愛護センター・民間の動物保護団体・野生動物リハビリテーターの3種類に分けて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
職種別の給料相場
ここでは、職種別の給料相場を紹介します。
総務省のデータによると、動物愛護センター職員の年収は約641万円です。動物愛護センターの職員は、地方公務員のため、ボーナスや退職金も支給され、安定した給料を見込めます。
参考:総務省
一方、民間の動物保護団体の年収は、施設や雇用形態によって大きく異なります。正社員雇用をおこなっている施設では、年収約195万~300万円と考えられます。アルバイトの場合は、時給1,000~1,150円程度で募集している施設が多いようです。
参考:activo
野生動物リハビリテーターの給料も、就職先によって異なります。自然保護団体に就職する場合は、年収約252万円以上になると予想されます。
参考:activo
動物保護の仕事の将来性
動物愛護センターは、都道府県などの自治体が管理しているため、就職できると安定して働けると考えられます。一方、民間の動物保護団体は、寄付や募金に頼って運営している施設が多く、雇用が不安定な場合もあるでしょう。
民間の動物保護団体への就職を考えている場合は、獣医師や愛玩動物看護師など動物保護に役立つ資格を取得したほうが収入は安定しやすいといえます。
また、野生動物リハビリテーターは、正規雇用をしている施設がほとんどありません。世界では20年以上前から活動が認められてきた職業なので、今後安定して働ける就職先が増える可能性もあります。
まとめ│動物保護に役立つ資格を取得するなら専門学校がおすすめ
動物保護の仕事は、動物愛護センター職員や民間の動物保護団体スタッフ、野生動物リハビリテーターなどさまざまな職種があります。仕事内容は職種によって異なりますが、どの職種も動物の命を守る重要な仕事です。
TCA東京ECO動物海洋専門学校では、愛玩動物看護師をはじめ、ドッグトレーナーやペットトリマーなどを目指せるコースを用意しています。本校で目指せる職種は、全て動物保護につながる大切な役割を担っています。
愛玩動物看護師は、正しい知識を飼い主へ伝えることで適正飼育を促す役割があります。ドッグトレーナーは、専門的なしつけをおこなうことで飼育放棄につながる問題行動を防ぐことが可能です。さらに、ペットトリマーは、犬や猫を美しく清潔に保つことで、ペットの放棄や遺棄を防ぐ役割を果たします。
これらの職種は、動物たちが安全で幸せに暮らせる環境を作るために欠かせない存在です。
TCA東京ECO動物海洋専門学校は、無料の資料請求やオープンキャンパスを実施しています。気になる専攻がある人は、ぜひお気軽に問い合わせください。