酪農ヘルパーとは、店頭に並ぶ牛乳やバターなどの乳製品の品質を保持するため、酪農家が働けない日に代わりに牛の世話をする人のことです。
「酪農家の助けができる酪農ヘルパーは、誰でもなれるの?」
「酪農ヘルパーになるには、どんな勉強をしたり資格を取得したりするといいの?」
「酪農ヘルパーの給料や将来性はどんな感じなの?」
酪農ヘルパーに興味があるけれど、将来の仕事にして生活していけるのか気になる人もいるでしょう。
また、仕事内容やヘルパーになるための方法を知りたい人もいるのではないでしょうか。
この記事では、酪農ヘルパーの仕事内容や給料、必要な資格や将来性など、多くの卒業生を全国各地に輩出してきたTCA東京ECO動物海洋専門学校が詳しく説明していきます。
一読すると、酪農ヘルパーになる方法から将来性まで一通り分かります。自分の将来を見つめる手助けになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
記事の概要
酪農ヘルパーとは?
酪農ヘルパーとは、酪農家の代わりに餌やりや搾乳、牛舎の掃除などを行う人のことです。
生きた動物を相手にして商品を出庫する酪農家の仕事は、毎日の餌やりや搾乳、掃除など一つでもおろそかにすると乳の質が低下するほど繊細なものです。
購入者に美味しい生乳や乳製品を届けるためには、酪農家は一日たりとも仕事を休めません。
ですが、365日休まず毎日働くのは現実として厳しいことです。
ときには、家族で旅行に行ったり子供の学校行事に参加したり、冠婚葬祭で仕事を休んだりしたいときもあるでしょう。
酪農ヘルパーは、国や地方公共団体も支援している仕事の一つで、酪農家が休みを取りたいときに代わりに仕事をこなす重要な役割を担っています。
酪農ヘルパーの専任と臨時の違いは?
酪農ヘルパーの仕事形態は以下の2種類あり、働き方に違いがあります。
- 専任ヘルパー
- 臨時ヘルパー
平成28年の農林水産省の調査では、全国の酪農ヘルパー利用組合に登録している専任ヘルパーと臨時ヘルパーの人数の割合は2:1でした。
数値を比較すると、酪農ヘルパーを専業にしている人のほうが多いのが分かります。
専任ヘルパーと臨時ヘルパーの違いをまとめた表は以下のとおりです。
専任ヘルパー | 臨時ヘルパー | |
給料 | ・月給 | ・日給 |
働く日数 ※酪農ヘルパ―組合により異なる |
・規定あり ※月20日ほど |
・規定なし ※依頼された日のみ |
予約期間 ※酪農ヘルパ―組合により異なる |
3か月~10日前まで | ・9日前~ |
待遇・福利厚生 | ・労災保険 ・雇用保険 ・健康保険 ・厚生年金保険 |
・傷害保険(加入者のみ) |
働く割合 ※平成28年の調査 |
・1,082名 | ・913名 |
参考:酪農ヘルパー全国協会
参考:農林水産省
専任ヘルパーは毎月決まった日数働きますが、臨時ヘルパーの場合は急にヘルパーを頼みたいときや専任ヘルパーが確保できないときに仕事を依頼されます。
そのため、臨時ヘルパーは仕事の予定があらかじめ決めづらくなっています。
保障面では、専任ヘルパーは会社員と同じように各種保険がついていますが、臨時ヘルパーの場合は労災保険や雇用保険、健康保険などはありません。
ただし、傷害保険への加入は可能です。
利用組合を通して臨時酪農ヘルパー普通傷害保険制度に加入すると、加入期間に起こった不慮の事故で怪我をした場合に保険金が請求できます。
参考:酪農ヘルパ―全国協会
専任ヘルパーは酪農家をサポートするのが仕事ですが、臨時ヘルパーは専任ヘルパーが足りないときにサポートするのが仕事です。
酪農ヘルパーになるための条件はある?能力は?
酪農ヘルパーは、未経験でも研修を受ければ充分仕事ができるようになります。そのため、初めは酪農の能力がなくても心配ありません。
ただし、コミュニケーション能力や適応能力はあるとよいでしょう。
研修対象の資格を満たした人は、酪農ヘルパー全国協会が行っている酪農ヘルパー養成研修を受けられます。
研修内容は酪農経験がなくても安心して受講できるよう少人数制で行われ、初心者Ⅰ、Ⅱ、中級者と3段階に分かれています。
初心者Ⅰは酪農の基礎知識や搾乳方法、餌やりや糞尿処理など、一から順に実技を交えながら2週間受けられるため、酪農初心者でも戸惑うことは少ないでしょう。
研修先は専門施設や大学、酪農体験や手作り体験ができる施設などを利用するため、牛を相手にした実技研修もしっかり行えます。
求人募集には学部・学科問わず募集している場合が多いため、酪農ヘルパーになるための条件は特にありません。
酪農ヘルパーに興味がある人は学歴問わず、チャレンジできます。
酪農ヘルパーになるには資格は必要?就職に有利な資格はある?
酪農ヘルパーに特別な資格は必要ありませんが、普通自動車免許は必要です。
普通自動車免許は通勤にも必要ですが、仕事先によってはトラクターを使い畑作業を手伝う場合もあるからです。
トラクターは普通自動車免許のAT限定でも乗れますが、大型トラクターの場合は大型特殊免許が必要です。
大型特殊免許を取得していると就職先の幅は広がりますが、仕事先によっては使用しない場合もあります。
また、就職後に助成制度を利用して取得できる場合もあるため、必ず必要なわけではありません。
酪農ヘルパーになるには、最低限、普通自動車免許を取得しておきましょう。
酪農ヘルパーになりたい人におすすめの学校は?
特別な資格は必要ない酪農ヘルパーですが、あらかじめ知識や技術を習得していると就職に役立ちます。
酪農の知識や技術が学べる学校は、以下の2つです。
- 専門学校
- 大学
順番に説明していきます。
専門学校
酪農ヘルパーの勉強をするには、学校内外の実習も豊富な専門学校がおすすめです。
知識や技術を高めるには専門分野のプロが教える校内授業だけでなく、校外の施設や企業で実際に経験を積むことも大切です。
プロの仕事を間近で見られ、知識や技術を吸収できるだけでなく、お客様を相手にコミュニケーション能力を磨く勉強ができるのも校外学習のよさの一つでしょう。
酪農ヘルパーはいろいろな酪農家と接する機会が多い仕事です。
動物園・動物飼育専攻では、コミュニケーション能力を磨けるスキルアップ検定が受けられるため、実践で生かしやすくなります。
2年制の専門学校では、1年間の学費は100万円~150万円ほど。学校内外の実習やイベントなども含めると、卒業までの学費は多くて300万円ほどです。
TCA東京ECO動物海洋専門学校は、酪農へルパーとして就職している先輩方も多くいる実績のある学校です。
そのため、全国7,500以上の研修先から自分で選んだインターンシップ先に、卒業生がいることもあります。
インターンシップ先に就職した先輩がいると心強いだけでなく、実際の仕事現場の話を聞く機会も増えるため、就職先を思案する参考にもなるでしょう。
大学
大学で酪農ヘルパーの勉強をする場合は、農学部や生物資源科学部、畜産学部などがある大学を選択しましょう。
4年制の大学の1年間の学費は150万円~170万円ほど。大学卒業までにかかる学費は、多くて600万円ほどです。
大学によっては、構内で動物を飼育している学校もあります。
座学だけでなく飼育も学べる環境がある大学を選ぶと、動物の扱い方や実技も勉強できるのでスキルアップしやすくなります。
ただし、専門学校に比べると飼育動物の種類や環境も規模は縮小されていることを理解しておきましょう。
大学によっては、興味を持った分野をより深く研究する道に進むこともできます。
酪農ヘルパーだけにとらわれず将来を広い視野で見つめたい人は、専門学校より大学を選択するのも一つの方法です。
大学と専門学校でお悩みの方はこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:大学と専門学校どっちがいいの?
酪農ヘルパーはどんな人に向いている?
酪農家のサポートができて動物との関わりも持てる酪農ヘルパーは、以下の人に向いています。
- コミュニケーションがとれる人
- 適応能力が高い人
- 洞察力がある人
- 動物が好きな人
- 身体を動かすことが好きな人
酪農ヘルパーは、常に同じ仕事場で働くわけではありません。
毎日同じ人とばかり接するわけではないため、仕事を任せてくれる酪農家の人たちに自分を信頼してもらう必要があります。牛との信頼関係も大切です。
ときには、仕事先の酪農家の留守中に牛や機械などに異変を感じる場合もあるでしょう。日頃からコミュニケーションが取れていれば電話で的確な指示を受けられ、速やかに行動に移せます。
また、酪農家によっては使用している機械や牛の飼い方などの作業方法が異なる場合もあるため、新しい環境でも一定レベルの仕事をこなせる適応能力が大切です。
コミュニケーションが上手く取れなかったり新しい環境に適応できなかったりすると、ストレスが溜まり、体調を崩す原因にもなりかねません。朝早くから夜遅くまで常に身体を動かしている酪農ヘルパーは、体力勝負の要素が強いところもあります。
そのため、なにより身体を動かすことが好きでないと、続けることが苦痛に感じるようになるかもしれません。
酪農ヘルパーは人や牛と接するのが好きで、身体を動かすことが苦にならない人が向いているでしょう。
酪農ヘルパーの仕事内容は?きつい?臭いは?やりがいはある?
酪農ヘルパーを仕事にする場合、ずっと続けていける仕事なのか気になる人もいるでしょう。給料面以外で気になるものを、以下に3つあげました。
- 1日の流れ
- 牛舎の臭い対策
- 酪農ヘルパ―のやりがい
1日の流れ
牛の搾乳や餌やり、牛舎の掃除など、酪農家の仕事は朝早くから始まります。
時間帯は仕事先により若干変動があります。
さほど仕事は大きく変わらないため、酪農ヘルパーの1日の仕事内容を確認してみましょう。
1日の仕事時間 | 仕事内容 |
5:00~9:00 | ・餌やり ・搾乳 ・牛舎の掃除 ・子牛に哺乳 ※季節により牧草やトウモロコシの収穫 |
9:00~16:00 | ・自由時間 ※牧場を離れてもOK |
16:00~20:00 | ・餌槍 ・搾乳 ・牛舎の掃除 ・子牛に哺乳 ・牛の寝床作り |
20:00 | 業務終了 |
決められた時間内に行う仕事は、牛に合わせて餌の配合量を変えたり、搾乳の前後に乳を消毒してミルカーを取り付けたり、牛舎の掃除をしたりなど、たくさんあります。
時間に追われて行う仕事が無事終了したあとは、用事を済ませたり趣味に費やしたり、昼間の時間帯を好きに過ごせるのが酪農ヘルパーのよいところです。
夕方になると朝と同じように仕事をこなし、すべての仕事が終了したあとは牛の寝床を準備して一日の業務が終了します。
牛舎の掃除や牛の世話など、体力を使うことが多い酪農ヘルパーは、女性より男性の割合が多くなっています。
とはいえ、男性の半分ほどの人数の女性が働いていることを考えると、女性でも酪農ヘルパーとして充分こなしていけると言えるでしょう。
牛舎は臭い?臭い対策はされている?
動物を育てている環境下では切っても切れない悪臭対策。酪農家は、臭い対策も毎日の仕事に含まれています。臭いを発生させにくくする対策として、牛舎の床を常に乾いた状態に保っています。
また、餌の腐敗や糞尿を長時間放置しないよう、毎日かかさず清掃作業を行うことも重要です。
朝晩の牛舎の掃除は牛の乳房炎の予防だけでなく、悪臭対策にもなっています。
悪臭について令和元年の農林水産省の調べを確認すると、畜産経営に起因する苦情は長い目でみると少しずつ減少してきています。
参考:農林水産省
苦情理由のなかの悪臭関連は52.2%、うち、乳用牛は26.4%です。
参考:農林水産省
長期的に確認すると苦情は以前よりは減ってきてはいるものの、まだまだ横ばい状態です。酪農家の間では、牛舎の敷料をコーヒー粕やカカオ殻などにする対策を行い、悪臭の軽減を図っています。
また、牛舎と堆肥舎の出入口に臭い対策の噴射機を設置し、臭い軽減に力を入れているところもあるほどです。
ほかにも、建物の換気をよくしたり、排出口を高く設置したり、周辺地域へ悪臭の濃度が高くならないよう注意しています。
糞と尿が混ざるとアンモニアが発生して悪臭が強くなるため、牛舎内を自動消臭してくれるシステムも販売されています。
悪臭に対応できるシステムが増えつつあるため、今後、少しずつでも悪臭改善が見込めるようになるでしょう。
やりがいはある?
酪農家が休みを取りたいときに代役で仕事をする酪農ヘルパーは、相手から感謝されやすい仕事です。
また、搾乳や餌やりなど、自分が携わった牧場の商品が店舗に並んでいるのをみると、やりがいも生まれます。
牧場により、搾乳方法や設備など仕事の仕方が少しずつ異なるため、初めは戸惑うこともあるでしょう。
ですが、頑張った分だけ自分の資産として返ってくる酪農ヘルパーは、知識や技術を高めていくと重要な仕事も任せてもらえるようになります。
搾乳だけでも高度な技術が必要になる酪農ヘルパー。
知識や技術、向上心などが評価されると20代でも酪農ヘルパー組合のリーダーに選出されることもあり、自信にも繋がります。
すでに牧場経営している酪農家は、同業者の知識や技術を吸収できる機会は早々ありません。
しかし、酪農ヘルパーはいろいろな牧場で働けるため、豊富や知識や技術が習得しやすい環境を手に入れやすいのが特徴です。
酪農ヘルパーは、いろいろな酪農家の考えや経営方法など良いところを取り入れ、得た知識や技術を活かして独立も目指せるやりがいのある仕事です。
酪農ヘルパーの就職先は?
酪農ヘルパーの就職先は、全国の酪農ヘルパー利用組合の求人を探すと見つかります。
また、酪農ヘルパー利用組合だけでなく、新・就農人フェアの合同説明会やコンサルティング会社が求人募集をしている場合もあるのでチェックしましょう。
全国にある酪農ヘルパーの就職先は、生乳の生産量が多い北海道が全体の50%を占めています。
就職後の仕事先は1箇所だけでなく、○○市や○○町などの範囲内で酪農ヘルパーを募集している牧場に通って仕事をします。
将来、酪農家としてスタートしたい場合は、新規就農者をサポートしてくれる就職先を選ぶとよいでしょう。
酪農ヘルパーの給料や平均年収は?賞与はあるの?
酪農ヘルパーの1ヶ月間の給料は平均20万円~28万円ほど。年収は賞与を含め320万円~480万円ほどです。
就職先により賞与の回数は年1回~4回とさまざまですが、平均すると2回ほどです。賞与が高めの就職先は、就業時間が8時間以上と長くなることもあります。
また、同じ就職先でも、都道府県や市区町村など勤務地により給料に差があります。
参考:求人サイト indeed
就職先を探す場合は勤務地も考慮し、総合的に考えて選んでいくとよいでしょう。
酪農ヘルパーの将来性は?独立できる?
酪農ヘルパーの将来性は、充分あるでしょう。
なぜなら、酪農家の労働時間を削減するため、農林水産省は酪農ヘルパーの人材確保に積極的に参加しているからです。
参考:農林水産省
市場に並んでいる生乳の味は、牛に与える餌の質や量、毎日の搾乳、牛舎の環境整備などにより変化します。
朝晩の搾乳を怠ると、牛の乳房内で菌が増殖し、酸っぱい乳になったり乳房が炎症を起こしたりすることもあります。
感染リスクを減らすためには、365日朝晩の搾乳がかかせません。また、牛舎を清潔に保つことも大切です。
私たちが牛乳や乳製品などを購入できるのは、酪農家が牛の感染リスクを減らすため365日、毎日かかさず仕事を続けているからです。
酪農家が1日仕事を休むとその分感染リスクが高まり、市場に並ぶ牛乳や乳製品などの量が減少する恐れもあります。
ですが、急な用事や怪我、入院など、どうしても仕事を休まなければならないこともあるでしょう。
農林水産省は、酪農家が安心して休みを取れるよう、酪農ヘルパー人材確保の支援をしています。
たとえば、酪農ヘルパー利用組合の強化や就学支援、学生インターンシップの受け入れなどの人材確保、育成支援、研修等にかかる費用の助成などを行っています。
酪農家は、家族経営や高齢者経営などからくる後継者不足により、飼養戸数が年々減少。
参考:農林水産省
飼養戸数が減少している反面、1戸あたりの牛の飼育数が増えているのは、地域の生産性や収益性を向上させる畜産クラスター事業が関係しています。
農林水産省が扱っている畜産クラスター事業により搾乳ロボットや飼料収穫機の導入が受けられるようになり、生産性が上がってきているからです。
とはいえ、すべての作業をロボットが行えるわけではありません。ロボットを動かす人材が必要になります。
生産性や収益性を向上させたい国の意向からも分かるように、酪農家をサポートする酪農ヘルパーの需要は高まる一方です。
さらに、酪農ヘルパーから将来、牧場経営をしたいと考える新規就農者に、就農に向けた研修を行っている地域もあります。
いろいろな牧場で酪農の知識や技術、酪農家の考えなどを学び、独立もできる酪農ヘルパーは充分、将来性のある仕事と言えるでしょう。
まとめ:酪農ヘルパーになって品質の良い商品を作る手助けをしよう
酪農家のサポートをする酪農ヘルパーは、酪農家を助けることで品質のよい商品を作る手伝いができます。
生乳の質は毎日の餌やりや搾乳、牛舎の環境により変化するため、1日仕事を休むと品質が低下する恐れがあります。
消費者によりよい商品を届けるためには、毎日働く酪農家の手助けをする酪農ヘルパーの力が欠かせません。
TCA東京ECO動物海洋専門学校の「動物園・動物飼育専攻」では、動物の飼育方法を実践的に学べるほか、畜産飼養や動物の身体の仕組み、動物栄養学などの理解も深められます。
酪農ヘルパーは、酪農家から大切な動物を預かりお世話をする仕事です。
動物の身体の仕組みを知ることで、身体の異変にいち早く気づけるようになり、事態の悪化を防ぐこともできます。
また、いろいろな人とコミュニケーションを取る酪農ヘルパーにおすすめな、コミュニケーションスキルアップ検定も受けられます。
「毎日食卓に並ぶ牛乳や乳製品を作る手助けをしたい。将来、酪農家になりたい」と感じた人は、TCA東京ECO動物海洋専門学校の詳細がわかる無料の資料請求してみてください。