特別対談
2024.04.01
オリがない!目の前でナチュラルな姿の動物と、花と緑が楽しい動物園
動物との距離が近く、ふれあいが楽しめると人気の「神戸どうぶつ王国」。 今回は、日々ステップアップする卒業生たちの様子をご紹介。本校卒業生の木村雪乃さんと田中秀太さん、そして園長の佐藤哲也さんにお話を伺いました。
目の前で、動物たちの自然な様子を楽しんでほしい
佐藤:ランドスケープを大切にする神戸どうぶつ王国には、動物を囲うオリがありません。動物は、本来生息する環境で生きるべき。だからやむを得ない場合もオリでなくガラスで仕切っています。植栽や水辺、岩石なども生息域と同様な配置をしています。このランドスケープという考え方は以前からあり、最近はさまざまな動物園で導入されるようになりました。当園はさらに考え方を発展させ、動物の行動に合った場を創っています。 田中:私の担当は鳥とスナドリネコ、そしてバクです。当園にはアメリカバクとマレーバクがいますが、アメリカバクは平地に生息し、高低差を嫌います。そのためオリの代わりに段差を設けさえすれば、それが立派な仕切り代わりになります。一方、マレーバクは平地や山を移動するので、段差も気にしません。そのためガラスで仕切り、彼らが自由に動き回れる環境を整えています。 木村:私の担当は鳥です。バードパフォーマンスでは、カラフルな大型インコやハヤブサが、ダイナミックに空を飛ぶ鳥本来の姿が楽しめると人気です。 佐藤:僕は、いつも君たちに提案を求めているよね。そんな提案が元になったのが、姉妹園の「那須どうぶつ王国」にいるジェンツーペンギンを、野生のように走らせること。でも、提案は却下することが多いですね。それは提案の多くが、どうしても既成概念にとらわれた内容だからです。どこかの動物園のマネだったり、すでにあるアイデアの延長だったりするんだよね。 田中:そういえば、ハシビロコウ生態園にベニハチクイを共生させるアイデアは、佐藤園長からでした。 佐藤:じっと静かにたたずんでいるハシビロコウの頭上を、群れになったベニハチクイが猛スピードで飛び回る様子は、ずっと以前から僕の頭の中でイメージしていたものです。実際に見た担当者は、「こんなスピードで飛ぶんだ」と目を丸くしていましたね。恐らくこれこそが自然に近い風景なのだろうし、お客さまも、動かないハシビロコウと活発に飛び回るベニハチクイのコントラストを喜んでくださっています。動物のトレーニングよりむずかしい人の育成
佐藤:田中さんも木村さんも、当園に実によく貢献してくれています。田中さんは、神戸どうぶつ王国に来て5年になるね。他の園でも働いていた経験があるので、合計12年以上のベテランです。木村さんは最初からここに来て、今年で6年目になるかな。 木村:はい。パフォーマーとなって4年半になります。 佐藤:二人ともバードパフォーマーですが、今は木村さんがメインでメンバーを引っ張っています。木村さんにはさらにスキルを伸ばしてもらい、後輩の育成にあたってほしいと思っています。木村さんは、沖縄にある他の園のスタッフを指導した経験もありますね。 木村:それまで教わる立場だったのが、初めてトレーナーとして指導にあたらせていただきました。教わるより、教える方が何倍も大変だと思い知りました。佐藤園長はいつも優しく教えてくださるのに、私はつい怒ってしまって何度も落ち込みました。 佐藤:大変だったね。知らないスタッフに対する指導で責任も重大だし、指導期間も限られています。しかしそれをやるのが、依頼された私たちの責任です。でも声の小さかった木村さんが、沖縄から戻ったらお腹からしっかり声が出るようになっていた!すごい成長です。 田中:木村さんは説明がとても上手で、後輩にもわかりやすいです。きっと沖縄での経験が生きているのでしょう。 木村:ありがとうございます。後輩への指導を通じて、バードパフォーマンスがもっと楽しくなりました。佐藤園長の言葉にも「なぜ」「どうして」と理由や理論を深く考えるようになりました。 佐藤:すべてに理屈があります。それを自分の頭で考えられるようになったことは、うれしいですね。ECOでは、人間の基礎力をつけてほしい
佐藤:お二人は、なぜこの道に進もうと思ったの? 木村:動物が好きだったからです。でもペットを飼ったことがなく、将来は絶対動物に触れる仕事がしたいと決めていました。 田中:私は親が動物好きで、自分も好きになりました。 佐藤:この仕事で生き物が好きなことは基本ですね。飼育などの技術は学校でしっかり身につけてもらいますが、この仕事で大切な資質は動物に対する好奇心と探求心、そしてホスピタリティです。そうした資質を、ECOでしっかり育んでほしいと期待しています。 田中:この仕事をやっていてよかったと思うことは、たくさんあります。中でも以前、バードパフォーマンス終了後に駆け寄ってくれた子どもさんが「僕のお父さん、鳥が嫌いだったのに好きになったって!」とうれしそうに教えてくれた出来事が印象深いですね。子どもだけでなく大人にまで感動を与えられ、動物好きな人を増やせるこの仕事に誇りを持っています。